2016/10/24

2016年7月「爲華忙」展覧会作品紹介 その7 月下


四川省に多く自生する「珙桐」は「植物のパンダ」と言われるほどの希少植物ですが、もうひとつ「鸽子(白バトの木)」という愛称があります。フランス人の植物ハンターによりヨーロッパに伝えられ、日本でも「ハンカチの木」と親しまれています。峨眉山にはその保護区があり、5月初旬に黄薇さんもいっしょに開花を見に行きました。標高2千メートル近いところにたくさんの木がありましたが、あいにく前日に嵐のような暴風雨があり、せっかくの白い大輪の花がたくさん地面に散ってしまっていました。それでも持ちこたえて咲いていた花を感嘆して眺めました。大人の手のひらほどもある大輪です。月下のこの花の下に南方の画眉鳥を休ませました。画眉鳥はその美しいさえずりが愛されています。少し標高の下ったところの名刹万年寺にはたくさんの珙桐の大木がありましたが、その時は花期は過ぎていました。
(2008.10)(64.5×85.5)

2016/10/20

2016年7月「爲華忙」展覧会作品紹介 その6 峨眉山の春


 峨眉山は李白の「峨眉山月半輪の秋」という漢詩でもよく知られた名山ですが、中国の仏教三大霊山(五台山、天台山、峨眉山)に数えられています。ふもとの報国寺から三千メートルを超える頂までに、26もの寺院があり、古来普賢菩薩の霊場として、一帯は聖地となっていたために自然が護られ、珍しい動植物の宝庫ともなっています。5月初旬に中国の「国家一級重点保護植物」に指定されている「ハンカチの木」(中国名珙桐)の花を見に行った折、野生シャクナゲや名も知らぬいくつもの愛らしい花々を見ることができました。これはそれを描きました。

  (2009.6)(65.5×92.5)

2016/10/12

2016年7月「爲華忙」展覧会作品紹介 その5 白木蓮と百舌


 中国では白木蓮は玉蘭といいます。四川大学西門から入ると左手に白木蓮と辛夷の並木があります。成都の春を告げる花で、昨年三月初旬に成都を再訪した際、ちょうどこの西門の花も、訪れた「武侯祠」や「望江楼公園」の庭園でも見事に咲きそろっていました。木いっぱいに咲き誇る白木蓮の花弁はまさに玉のように艶やかで、ほんのりほのかに薄紅やクリーム色が透けて、見飽きない美しさでした。百舌はよく鳴く鳥で、成都でもよく見る鳥でした。
 (2008.6)(71.5×65)

2016年7月「爲華忙」展覧会作品紹介 その4 喜樹と背黒鶺鴒


 四川大学に着いたばかりの秋、不思議な木の実をたくさんつけた背の高い木を見かけました。図鑑で調べて「喜樹」という中国特有の木だと知りました。次の年、黄薇さんと共に花のつぼみ、開花、結実と何度も足を運んでスケッチしました。背黒鶺鴒は、よく石畳の広場や歩道で、猛スピードで歩きまわっているのを見かけました。この鳥は東京でもよく見かけます。

2016/10/11

2016年7月「爲華忙」展覧会作品紹介 その3 霜降 



「霜降」は、二十四節気のうち暦の上の十月下旬頃から立冬までを指し、初めてしもがおり、秋もいよいよ深まり、冷たい冬の足音が忍び寄るころを言います。しかし、成都で霜が降りることはありませんでした。秋の深まりは、木々が徐々に枯れ葉色に変わることからそれとわかります。 四川大学の北門は大学のいわば正門で、門を入ると両側に蓮池があり、五月には美しい花が池一杯に咲きました。その蓮池が枯れ葉色になり始めたころ、群れ飛ぶ「白頭」をよく見かけます。熟れた蓮の実をついばみに来ているようでした。この鳥は、日本では沖縄にしかいませんが、成都では一年中、朝早くから大きないい声でさえずっていました。

 (2009.3.5)(82×53.8)